Development notes京西電機株式会社の開発の取り組み

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目標管理活動 インバータ設計の成果

京西電源にはAC-DC、DC-DC設計実績はありますが、AC出力は引き合いが少なく実績がありませんでした。

しかし最近は太陽光発電や燃料電池、自動車のバッテリーからAC出力を得るインバーター技術が脚光を浴びています。そこで今後更に広がりを見せるであろう注目技術と考え2022年より目標管理活動として取り組んできました。

簡単ではありますが、今年度の取り組みの成果を報告します。

1, インバーターについて

交流出力は、AD vs BCトランジスタを交互にON-OFFして実現させます。
また、出力波形は方式によって「矩形波」と「正弦波」に分類できます。

矩形波

正弦波

京西インバーターはPWM(パルス変調制御)を用いて、正弦波交流を発生させる技術に挑戦しています。

2, 前年からの引継ぎと今年の成果

2023年 本年度の成果

 

・目標

AC100V×10A 1000VA回路

・用途

UPSなど工業製品をイメージしたインバーター

・成果

1000VAを目指したが安定動作できたのは700VAまでであり、残念ながら目標達成は出来ませんでした。しかし出力フィルター定数の最適化により正弦波出力波形の良好化方法を見つけるなどの成果もありました。

・出力波形


100v/div 4mS/div  負荷700VA

2022年 本年度の成果

 

・目標

AC100V×5A 500VA回路

・用途

災害時の非常用電源などへの応用

・成果

500VA出力回路が設計できました。

・出力波形


100v/div 4mS/div 負荷500VA

3, 課題と成果

課題1 ブリッジ回路の容量UP
下記【工夫点1参照】

「成果」
現ドライブ回路のまま容量UPさせるためにFETの単純並列化により容量UPを実現しました。もしモジュール単位で並列化する場合は、ドライブ回路を複数用意してモジュール毎のGND電位に注意して設計する必要があると思います。

課題2 出力波形の歪改善
下記【工夫点2参照】

「成果」
出力LCフィルタの最適化により出力波形の整形(歪改善)が出来ました。なお当初はPWM周波数を上げてLCフィルターの小型化を考えましたが、実際には効率などを考慮し2~3KhzのPWM周波数に落ち着きました。
それ故、LCフィルターは鉄心/フェライトの材料による特性差は出ておらず、もし周波数を上げる場合は材料にも注意が必要と考えます。

課題3 過電流回路の強化
下記【工夫点3参照】

「成果」
従来回路は、負荷電流の平均化と遅延時間によりブレーカーの様なラッチ停止する過電流保護回路でしたが、負荷の種類によってはインラッシュ電流が発生しFETが保護できない事が分かりました。対策として瞬発的な過電流から回路を保護する非ラッチの保護回路を追加しました。

4, 回路の変遷(工夫点)

工夫点1

FETの単純並列による容量UP

 

前年回路

工夫点2

出力フィルターの最適化

前年回路

工夫点3

瞬間的な過電流に対応する
非ラッチの過電流保護回路の追加

前年回路

5, 最後に

インバータ製品自体は世間に認知されて来ましたが、肝心な中身(回路技術)はまだまだ秘密が多く、製品化のためには更なる研究が必要と感じました。引き続き他方式の調査や設計セミナーへの参加、書籍研究などを通して技術開発に取り組みたいと思います。

弊社の電源技術はお客様のニーズに合わせたカスタム電源の開発・設計を行っており、高信頼・耐振性・長寿命・特殊環境など、あらゆる各種産業機器分野にて採用実績が御座います。
また、汎用品を用いたユニット電源開発からアプリケーションに合わせた付加機能の設計開発も得意としておりますので、回路・電気から筐体設計に至るまで、高度な設計・製造技術でご要望にお応え致します。