500VAインバーター回路の設計
1 概要
インバータ設計について研究の機会を与えて戴きありがとうございます。現状までの成果と、設計完成後はどんな製品に技術展開可能なのかを簡単ですがまとめましたので報告します。
2 試作電源の仕様と技術の活用例
入力 150VDC
出力 500VA 50hz 電子fuseによる過電流保護回路付き
【技術の活用例】
京西にインバーター技術があれば、次の様な応用製品への取り組みが可能です。課題も見えています。引き続き新技術への挑戦を続けます。
・自然エネルギー発電からの交流変換装置
・災害時に役立つ小型AC電源、非常電源など
・USP電源
・ACモーターの駆動電源
3 インバーターの基本
交流化の基本回路はブリッジ回路となります。
上図のTr:AとD、Tr:BとCをそれぞれ対にとして、交互にON-OFF繰り返す事で交流出力を得ます。しかし単純にON-OFFさせるだけでは出力波形は矩形波となり用途が限定されると(一般的に)言われています。
【矩形波例】
今回取り組んだインバーターでは、PWM(パルス変調制御)を用いて正弦波交流を発生させる回路技術に挑戦しました。
【正弦波例】
4 想定した技術課題と現状の成果
インバーター技術は既に商品化されているものの方式は様々でまだまだ新しい部類の技術と言えます。たとえば専用の制御ICは発売されておらず実現のためには独自回路の設計が必要となっています。下表に解決すべき課題とその解決策(活動成果)をまとめました。
当初想定した課題
1、ブリッジ回路のHi側Trの駆動電源
ブリッジ回路用ドライバーICを用いた場合、出力50hzの低周波ではHi側回路のVCCが確保できない。トランスドライブでも同様である。
技術成果:Tr:AとB、Tr:CとDを必ず反転する様にON/OFFさせる方式でHi側回路のVCCを確保した。
タイミングは複雑だが、Simulatorソフトを用いて論理設計を行った。
2、過電流はピークか実効値にするのか、過電流検知方式について検討が必要だった
技術成果:リアルタイムの定電流垂下を目指したが断念し、ピーク&ディレイ式のラッチ方式の過電流保護、つまりブレーカートリップと似た特性の回路を採用した。
3、正弦波となるための出力フィルター(L&C)の検討
技術成果:採用したPWM周波数とマッチした出力フィルターが必要。波形改善のためのカギである。
5 現状までの成果(出力波形)
無負荷波形
上:出力電流波形 5A/div
下:出力電圧波形 100V/div
500VA定格波形
上:出力電流波形 5A/div
下:出力電圧波形 100V/div
6 製品化のための課題
独自回路を設計し交流出力が得られましたが、これで完成ではありません。下記に示した製品化のための課題解決や更なる高効率化を目指して研究を続けます。
応用例
1、自然エネルギー発電からの交流変換
課題:一般的には売電を目的としたインバーター設計になると思います。その場合は商用線へ逆送電するための交流同期技術の開発が必要です。
2、変換効率の改善・大容量化
課題:今回小型のインバーターとしましたが、UPSや売電を目的としたインバーターでは1KWを超える製品も存在します。大容量化や高効率化は必要になると思います。
3、昇圧回路 バッテリー12V → DC150V
課題:今回の実験では入力に外部電源を用いてDC150Vを発生させていましたが、実際の製品では昇圧回路も作る必要があります。今まで設計した事がない出力電圧なので全く簡単だとは言いきれません。
4、災害時に役立つ小型AC電源、非常電源、USP電源(非同期式)など
課題:現状最も取り組み易い製品対象だと考えられます。
5、ACモーターの駆動電源
課題:トルク過大となった場合の「滑り制御」と呼ばれる技術開発が必要になると思います。
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